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書評「青くて痛くて脆い」 [書評・映画評]


青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆い

  • 作者: 住野 よる
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: 単行本


就職内定を受けた大学4年男子学生の田端楓は、嘘ばかり書き並べた履歴書を見ながら、入学当初に出会った女子学生秋好寿乃のことを思い出していた。
最初の授業で奇抜な行動を起こした、青くて痛い秋好と出会い、なりゆきから友だちになってしまい。「なりたい自分になる」ことを目標とした秘密結社「モアイ」を二人だけで立ち上げた。
時が流れ、あの時の彼女は消え、巨大化した組織「モアイ」は当初の理念を失い、歪んだ組織となり、楓ははじかれてしまった。目を背けて過ごした2年半。彼は卒業前にもう一度「モアイ」を元の姿に戻したい。そのために今ある「モアイ」を潰そうと画策する。それは秋好がついた「嘘」を「本当」に変えるため。

「君の膵臓を食べたい」の作者の5作目の小説。はっきり言えば、発表するたびに小説のレベルが落ちていく。「また同じ夢を見ていた」の時は半分読んで捨ててしまいたくなったが、後半がぜん面白くなったのだが、この小説は5分の4までまったく面白くなかった。読者ターゲットをどこに置いているのだろうか。少なくとも高校生以下が読んでもまるで面白くない。読む気にさえならないと思える。確かに終盤、主人公の楓が巨大組織のリーダーと直接対決する場面以降は住野よるらしさが出てきて盛り上がって面白いのだが、そこまで我慢が出来るのか。

大学4年生の就職活動を舞台とする物語で、読み始めてすぐに、あの映画化もされた「何者」を思い浮かべてしまった。最後までそのイメージが消えることが無かった。ああいう就職活動を経験したことのない者にとってはまったく異世界の物語。おまけに、巨大組織をぶっつぶそうと言う過程が陰湿すぎて、とても主人公に感情移入できない。目的を果たすために誰かを傷つけることになり、そして自分自身も傷ついてしまう。彼は結局何をしたかったのか。

物語が終わってエピローグまで5年経過したらしい。彼の計画に利用してしまったバイト先の後輩の女の子の年齢からそれがわかるのだが、彼女をも傷つけてしまい、きっちりと事情説明して謝ったのかどうかも不明。そこんところ、きっちりしてほしかった。

ミステリーぽく「秋好がいなくなって」と書かれていても、すぐにその書き方に気がつく。ひと言も死んだとは書かれていないから、後半にしっかり事情がわかるのだろうとは思っていたけれど、ちょっと反則だろう。類推さえ出来ない描写なんだから。まあ可能性は感じてはいたが。

楓と秋好の関係は「君膵」の二人の関係と似ている。恋愛感情はないのだが、お互いに相手を必要な存在と思っていた。残念なことにそのこと自体に主人公が気づかなかったことが悲劇になってくる。
楓は秋好のことを「青くて痛い」と思っていたのだが、実は自分自身が「青くて痛い」存在だったことを、相手を傷つけてから気がつく、まさに手遅れになってしまった。脆い存在だと言うことに5年経ってようやく理解できるようになったという。

どうにもこうにもやりきれない小説だと思う。



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書評「りゅうおうのおしごと! 8」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! 8 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 8 (GA文庫)

  • 作者: 白鳥 士郎
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/03/14
  • メディア: 文庫


今回は前巻での予告通り、いつも「感想戦」で常連となっている二人のタイトル戦が中心、と言うより、それしかない。

このシリーズ中の表現で言えば、今回は、はっきり言って「捨て局」

どちらが先だったのかはわからない。
「感想戦」での二人をじっくり描きたかった、いわば長文の感想戦か、あるいは、おりおりに番外編として発表していたオマケ小説を集めたかったのか。

タイトル戦だけでは尺が足りなかったのか、まったく脈略のない物語を挿入してなんとか一冊に作り上げたような印象がしてしまう。

ということで、今回は主人公九頭竜八一もヒロインの雛鶴あいも、まったく対局場面がないし、本編中にもう一人のヒロイン空銀子も出てこない。二番弟子も出てこなければ、主人公のライバルも登場しない。なんだコリャと思ってしまう。

嘘から出た誠

創作物語では、登場人物および団体は架空のものだと言うのは常識。この小説でも将棋連盟が直接関わり、重要な位置づけにある「順位戦」「竜王戦」及び、全面協力を得ている「マイナビ戦」の3つの棋戦のみが現実通りに描かれているが、その他は、普通は名称のみの使用だから、いちいち断るのも承諾を得るのも面倒くさいので、架空のタイトル名になっている。今回の「山城桜花戦」という名称も、元元は実在する「倉敷藤花戦」をもじっただけのはずだったのに、このタイトル戦を中心にしてしまったために、これは想像なんだが、京都市にお断りとお願いをしたのではないかと思われる。その結果、協力は得られたが、その分、しっかり京都を宣伝して欲しいとか言われたのではないか。だから京都の観光案内が必要以上になされている。

ちなみに京都では、京都を舞台にした小説で観光案内に役立った物には賞を与える制度があって、今回のこの小説も賞をもらえるのではないかとか。

今回も作者は事実を歪めてめちゃくちゃなことをしてくれている。

まずはタイトル戦三番勝負を観光のの目玉にするのは実際の倉敷藤花戦でもそうだからいいのだが、行われるかどうかわからない第3局をも特設会場で行うというのは無理でしょう。倉敷藤花戦でも第2局と同じ場所を用意していて、流れればそれは仕方がないとすませられるが、別会場は困るでしょう。ついでに言えば第3局が行われるという前提自体、今回のタイトル戦が1勝1敗で第3局を迎えるというネタバレになってしまうのだが。
さらには、屋外の会場というのもどうなんだろう。雨の時を想定していないのか。まあ天童での人間将棋も晴れを前提としていて、雨の時は体育館で行うという予定にはなっているが、タイトル戦では保険として午前中は別室で行って、午後だけ公開となっているのが通常。ちょっと今回の小説は悪手が多すぎる。

で、当然のことながらとんでもない事態が持ち上がるのだが、これは未読の人用にお楽しみにしておく。

作者は時々ミスリーディングを仕掛けてくる。

今回も3分割された「自戦記」でそれを狙って、2つ目で仕掛けに気づいたが、最初はちょっとミスリーディングしてしまった。こういう仕掛けは好きです。

今回、「感想戦」の二人の心情がかなり深く描かれていて、内容的には良いと思う。特に供御飯さんの語りは切なくて哀しい。個人的には彼女が好きです。理由は僕と誕生日が同じだから。

で、究極の死闘を繰り広げる二人なのだが、当初の予想通り、「感想戦」ではタイトル戦翌日だというのに、仲良く対局しているという絵があってほこっとする。

で、最後にひと言言っておこう。

何の脈略もなく挿入されたオマケ話。あれは完全な蛇足。読む気にもならず飛ばしてしまった。ああいう文章まったく必要ない。

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書評「コミック りゅうおうのおしごと7」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! (7) (ヤングガンガンコミックス)

りゅうおうのおしごと! (7) (ヤングガンガンコミックス)

  • 作者: 白鳥士郎
  • 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
  • 発売日: 2018/03/13
  • メディア: コミック


小説のコミカライズって、多くの場合小説のエッセンスを取り上げたり、絵的に見やすくしたりするものであって、原作小説を越えることはほぼないのだけれど、今回のこのコミックは原作小説を越えてしまった。
原作の短い描写をすさまじく押し広げて、原作者が踏み込めなかった部分まで圧倒的に入り込んで、ページが足りなくなってしまった。普通は省略しすぎで物足りなくなるんだけど。
まあ、もちろんばしばし省略したところも多いんだけど、今回ばかりは許す。

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書評「荒神」 [書評・映画評]


荒神 (新潮文庫)

荒神 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫


元は一つの藩であった永津野藩と香山藩は、関ヶ原の戦いの功績で、家老が独立、上山と言われる山を挟んで隣り合う二つの藩となった。これを面白くないとする永津野藩はあわよくば元に戻したいとプレッシャーをかけ続け、対立が激しいまま、元禄時代を迎える。
そんなある日、香山藩の国境の村が一夜にして全滅する。

香山藩の小姓である小日向直弥は永い病で任を解かれて療養中。病が癒えたと思われた頃、藩主の愛人の一人息子が同じ病で急死する。暗殺の疑いから、関わりが疑われて身を隠すことになる。折しも村消失事件の調査に向かっていた親友を含む調査隊が音信不通となり、身を隠すついでに生死を確認することにする。

永津野藩で、藩主のお気に入りとなった浪人が藩の財政改革に功を上げ、曽谷弾正と名乗り、行き過ぎとも思える政策で藩の実権を握る。彼の双子の妹・朱音が呼び寄せられたが、彼女は兄のやり方に反発を覚え、国境の村に住んで村人に溶け込もうとしていた。そんなある日、全滅した村から国境を越えて傷だらけの少年が担ぎ込まれる。少年から聞いた話から彼女は国境に出かけようとする。

そしてこの二人の男女は、ほぼ時期を同じくして、村人が怪物によって食われてしまったことを知り、眼前に想像を遥かに超えたその怪物を目にする。


読みながら感じたのは、これって、某アニメ・ナウシカじゃないかとか、ゴーレムでしょうとか。時代劇的じゃないんだけど、まあ呪術を認める世界ではありの話だが、その一方で呪いによる殺人を否定したりとか、細かいことを言えば切りがないが。

ただ、展開は面白いのに、結末がこれでいいんだろうかとか、この先、二つの藩はどうなっていくんだろうかとか。まあいろいろ気になることも多かったり。


で、NHKでスペシャルドラマがあったのだが、これがはっきり言ってがっかり物。原作を4分の1に縮めたというか、本来2藩の物語なのに、朱音の話だけにしてしまって、メインの登場人物が半分になってしまい、そのため設定も変えてしまったり、怪物を見てもそんなに恐怖を感じなかったり、制作者はいったい何をやりたかったんだろうか疑問を感じて仕方がない。

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書評「物語のおわり」 [書評・映画評]


物語のおわり (朝日文庫)

物語のおわり (朝日文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2018/01/04
  • メディア: 文庫


8章からなるオムニバス小説。1章を除いて他はすべて一夏の北海道の物語となっている。前章の中心人物が次章でのつなぎ役となり、湊かなえの小説によく見られる時系列トリックはなく、正しく時系列通りに話は進められていく。
それぞれ自分のこれからのことに悩みを抱えた5人の男女が北海道を一人旅する物語。彼らに順繰りに、まるで伝言ゲームのようにプリントアウトされて綴じられた紙束が渡されていく。それは「空の彼方」と題された、誰かの自伝のような青春小説。しかし物語はクライマックスに来て突然終わってしまう。結論が書かれていない。彼らはその結論を考えながら、自分たちのこれからのことを照らし合わせて考えていく。

1章が「空の彼方」の全文。2~6章までがそれぞれの物語。出産間近の主婦、卒業を控えた女子大生、家の後を継ぐことになりカメラマンの夢をあきらめる若者、アメリカ行きを勝手に決めた娘を持つライダー、結婚に踏み切れずに仕事一筋に生きたキャリアウーマン。彼らは自分たちのこれまでと「空の彼方」の人物を重ねて先を思ってみる。

7章と最終章は種明かしとなる。最初にこの「空の彼方」を手渡した女子高校生は、なぜこの小説を持っていたのだろうか。7章でこの高校生の正体が明らかになる。ただしこの章の主人公はある男性。純粋には一人旅ではなく、ある目的で北海道に来たのだが、彼も悩みを持っていた。そして彼も「空の彼方」を受け取ったのだが、彼にはこの小説を書いたのが誰なのかが推測できた。

最終章はこの女子高校生の物語。この章だけ二人旅tなっており、当然ながら彼女はこの「空の彼方」を手渡されてはいない。しかし実質的には受け取ったのと同じ状態になる。そして小説には書かれてはいないのだが、おそらく彼女もこの話が終わった後に受け取ることになるのだろう。7章の男性と会うことが確定しているのだから。


湊かなえは「イヤミスの女王」と呼ばれている。嫌な気分で読み終えるからということで。だからこの小説にはわざわざ本人直筆で「これはイヤミスではないよ」とメッセージカードが付けられている。しかし嫌らしい作品だ。いつも結末が嫌だと言うのなら、自分で結末を考えて見ろ、と投げ出したような物だから。読者はこれにだまされる。結果、各章の主人公達も結末がどうなったのか書かれていないのに、そのことを忘れさせてしまう。

そして、最終章で実は「空の彼方」には正式な結末が存在していたと言うことがあかされる。なんのこっちゃ。しかも、小ネタで、こっそり伏線が張られていたことを知らせる。驚きましたね。あの章のあの人物と最終章でのこの人物に、実は当人も知らない関係があっただなんて。当人同士、もし会ったなら驚くでしょうね。伝言ゲームだから会うことはないんだけれど。

最終章で、ネットでの評判は怖いと書かれている。湊かなえの実感でしょうね。デビュー作で散々叩かれたのだから。めちゃくちゃ面白かったんだけどね。

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映画「祈りの幕が下りる時」 [書評・映画評]

祈りの幕.jpg
作家としての東野圭吾は好きではない。彼はおそらく中学高校時代に学校で嫌なことがあったのだろう、教育現場に対する異常なまでの偏見が作品の中に見られる。学校や管理職は事なかれ主義で、体面だけを繕い、反する生徒を消し去り臭い物に蓋をするものばかり、教師は自己保身と出世欲と生徒を自らの快楽の対象としか見ない者ばかりとか。とにかく描き方が歪んでいるので読んでいて気分悪くなるから読まないことにしているのだが。

しかしこの映画は絶賛の拍手を送りたい。教師が一人だけ出てきて、お決まりのようにゲスなんだけど、そこは許してあげよう。
批評家は「東野版「砂の器」」と評した。映画を見ていてかの名作「砂の器」を思い浮かべたのは「砂の器」を知っているすべての人だろう。哀しい定めにあった親子の切ない物語。終盤犯人によって語られるこの場面には涙なくしては見られない。そして「砂の器」以上の評価が出来るのは、あの映画が結局は犯人の保身のために行われた殺人であるのに対し、この物語はお互いが愛するための犯行だということ。加害者は愛するが故に殺人を犯し、被害者はありがとうと言って息が絶える。あまりにも切なすぎる。

TVで「新参者」シリーズとして放送された物語の映画化第二弾であり、同時に最終話となっている。上述のことでTVは見なかったが、先の映画「麒麟の翼」は日本映画チャンネルでの放映を録画していて、ずいぶん経ってから見たがはまってしまった。ネットでシリーズを検索してその世界観を読んだので、シリーズを見ていなくても状況は理解できたので困ることはなかった。

主人公は加賀恭一郎という、なぜか日本橋から離れようとしない刑事。彼の母親が少年時代に謎の失踪をしていて、そのことから刑事であった父親と対立。従兄弟の松宮も刑事をしていて、二人はよくコンビを組む。彼もなかなかの凄腕の刑事。すぐれた直感を頼りにしての捜査が当たることが多い。

一人の女性の腐乱死体がある部屋で発見され、その部屋の住人の男が行方不明となっている。松宮は同じ時期に起きたホームレス焼死事件と関係があるのではと思い、調査結果同一人物と判明。
亡くなった女性は滋賀県から一歩も出たことがない女性と判明。なぜ東京に来ていたのか。仕事で訪れた老人ホームの名前も不明のわがまま老女が中学同級生の母親であることに気づき、それを口実に、今は有名舞台演出家をしている元同級生の女性を訪れようと思ったらしい。そしてその舞台演出家を訪問した松宮刑事は、帰りしなにチラッと見た壁の写真に、彼女と一緒に写っている従兄弟である加賀恭一郎を見つける。

加賀に会った松宮はちらっと、現場に残されていたカレンダーに毎月日本橋近辺の橋の名前が書かれていることを漏らすと、加賀は仰天した。16年前に孤独死した失踪した母親の遺品となったカレンダーに書き込まれていたのとまったく同じだったから。母の遺品を預かった人の話では、晩年の母には恋人と呼べる親しい人がいたとか。その人から加賀の住所を聞き連絡が取れたようだ。しかしその彼も行方不明。筆跡鑑定から二つの書き込みは同一人物と判明。殺されたホームレスの男は加賀の母親の恋人だった。

橋の捜査を行った加賀は、過去の写真から誰かと連絡を取っている舞台演出家の姿を発見した。やはり彼女が事件に絡んでいる。しかし腐乱女性殺害事件の犯行当日をはさむ数日間は舞台演出のため劇場を一歩も出ていなかった。関係性はつかめても捜査は行き詰まりを見せていた。何かまだ調べていないことがあるはずだ。そして加賀は思いついた。調査していない人物が一人だけ残されていた。それは自分だった……

舞台演出家の関係者をたどっていくと自分の母親につながり、それは自分ともつながっているということ。そして自分自身がその舞台演出家と3年前に知り合いになっていたと言うこと。彼女は何故自分に会いに来たのだろうか。そもそも母が亡くなった時に自分の住所を誰が調べて遺品管理者に教えたのか。住所の件はすぐに判明。彼が剣道大会で優勝した時の剣道雑誌を見て雑誌社に連絡を取ったらしいが、それが舞台演出家の女性だった。彼女と母の恋人とどうつながるのだろうか?

迷宮入りと思われた事件が、舞台演出家の彼女が3年前に加賀に会ったことから切り崩されていく。松宮がついに最後の重要人物の存在を見つけ出していく。そして同時に、加賀は舞台演出家が中学時代に飛び降り自殺で亡くなったはずの父親の隠された事実を見つけ出していく。
加賀が彼女をさりげなく訪問し帰った時に、彼女は彼が訪問した真の目的に気づき、すべての事実が知られてしまったことに気づく。そして舞台最終日、涙なしには見られない告白が始まる。

しかしこの犯人、警察は犯行を立件することができるのだろうか。
警察への連行はあくまでも逮捕でなく重要参考人調書となるはずだ、なにしろ、一つ目の殺人に関しては何の関わりもないことがはっきりしており、加害者はすでに死亡しているのだから。そして二つ目の殺人も、被害者はすでに戸籍抹消された人物であって、生存証明されない限り犯罪は成立しないはず。あるのは犯人の告白だけであって、証拠は一つも存在しない。証拠不十分で釈放というところだろう。形としては迷宮入りの事件であって、警察内部だけ解決済みの事件とするのがすべての関係者にとって良い方向ではないかと思われる。そうでもしないと、彼女のために亡くなった人物が浮かばれない。


シリーズにとっての重大な謎が今回の事件をきっかけに解かれていく。母親がなぜ失踪したのか。加賀はなぜ日本橋にとどまり続けるのか。謎が解かれてしまったために今回でシリーズ終了となるようだが、この二つの謎とは別にシリーズは続いても構わないというのが皆の意見だろうし、舞台挨拶でも出演者がぜひ続編を書いて欲しいと要望したそうだ。東野圭吾が嫌いだから本を読むのはためらうのだが、このシリーズ、読みたいと思う気持ちと戦っている。まあ「麒麟の翼」はぱらぱらと立ち読みしたからいいだろう。(あちらも学校の扱いはひどかったが)
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映画「嘘を愛する女」 [書評・映画評]

嘘女.jpg
実際にあった事件をモデルにした映画。
元の事件は、5年間一緒に暮らしていた男が亡くなり、死亡届を出そうと役所に行けば、戸籍は偽物で、名前も本籍地も実在せず、この人は誰だったのか、本人が亡くなった今となっては調べようがなくなったと言う。
この事件をある人が本に取り上げ、それを読んだ人がこの物語を思いついたという。
映画化に先立って小説版も書き起こされたのだが、本屋でパラパラと見た感じではかなりの部分が違っていたり。はっきり言って小説は稚拙が目立って読もうとは思えなかった。映画の方も気になる点は多い物のまだましかなという印象。

物語は、公園でくも膜下出血で倒れている男(高橋一生)が発見される。病院に運ばれたが意識不明のまま。警察が男と一緒に暮らしている女(長澤まさみ)の元を訪れ、男が持っている免許証や身分証明書が偽造された物で、住所も名前も嘘だという。
震災の日に助けてもらって出会い、その後偶然街で見かけて家に連れて行って一緒に暮らし始めて5年、彼のことを何も知らなかったことを思い知らされる。
男の持ち物を探しても、どこかコインロッカーの鍵が見つかっただけで、本人確定の物は何一つ見つからない。勤めているはずの所に行けども、そんな人は過去も現在もいないと言われ、途方に暮れた中、偶然にも同僚の叔父が探偵をやっているという話を思い出し、同僚には内緒で探偵事務所を訪れる。パソコンに詳しい助手(DAIGO)と二人でやっている探偵(吉田鋼太郎)が姪の友人だと言うことで引き受けるが、まったく手がかりがつかめない。
そんなある日、女の家の郵便ボックスを勝手にあさる謎の女性(川栄李奈)を発見。どうやら男をつけ回しているストーカー女のようで、探偵と一緒にストーカー女のバイト先の喫茶店に出向く。そこで知ったのは、男がいつもパソコンで何かを書いていたという。家にはパソコンがないはずだが、あのコインロッカーの鍵がそのパソコンを隠していたロッカーの鍵だと言うことが判明。パソコンを取り出し、パスワードをハッキングすると8桁の数字が出て来る。日付らしいがその日付は男が女と出会う前の日付となる。
パソコンの中には書きためていて途中になっている私小説らしい物語が出てきた。描かれる瀬戸内海の風景と頻繁に出て来る「灯台」という言葉を頼りに女は瀬戸内海の灯台を探し回る。
ある島で男によく似た人物を見かけたという。その島の灯台で男が隠したと思われる「宝物」を発見する。この島に間違いはない。しかし……


気の遠くなるような物語である。そして穴も多い。
結局は目撃された人物は別人だったと判明するのだが、だったらあまりにも偶然すぎる。その灯台で証拠品が発見されたこととの整合性がまったくない。そして物語はさらなる偶然によって男の身元が判明するのだが、ならばつじつまが合わないことに映画も小説も何も問題を感じていないようだ。

結局どうなるのか、話の先も描こうとはしない。自分勝手で嫌な性格のキャリアウーマンがその後どうなっていくのか語ろうとはしない。前半あれだけ仕事内容に触れていたのに、後半一度たりとも会社の話が出てこない。仕事を辞めていてもいいんだし、自己を反省して仕える立場で仕事を再開してもいいのだが、それさえ不明。物語の流れとしては不親切。まあ長期仕事を休んで男の調査をする理由付けをしただけのことなんだろうが都合良すぎる。

探偵の家庭状況も出て来るが、蛇足にしか感じない。こんなエピソード必要ないだろう。
小説版には登場しないストーカー女がその後頻繁に探偵事務所に侵入してくる。パソコンの出来る助手に興味を持って近づいて来たのだろうか、それも中途半端。出すなら出すで、たとえば最後に二人がデートでもしている場面を出せば良いのに。そんなことさえしないのなら、途中で出す必要ないだろうに。

余談だが、長澤まさみの笑いこけてる場面、福田彩乃としか見えなかった。
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書評「りゅうおうのおしごと7」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

  • 作者: 白鳥 士郎
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/01/13
  • メディア: 文庫


2年連続「このラノベがすごい!」第1位を獲得したロリコン本格将棋ラノベ第7弾
今回も変態度は健在で、17歳主人公が2歳年下の「姉弟子」中学生女子を連れて、真面目な将棋の研究会後に毎度ラブホに連れ込み、変態プレイに明け暮れるという。いやいや一応社会的地位を得た少年が中学生女子を怪しげなホテルに連れ込む自体で、公になればいくら同意の下とは言え、炎上どころか責任問題で釈明会見を開かないといけないことになりそうなんだが。もしそうなったとして、おそらく姉弟子は「妊娠はしていません」とかの、誤解を生みそうな発言をしそうな気がするが。

今回は主人公の師匠、清滝鋼介九段が主役の物語。過去名人挑戦2回の実績を持ちながら、棋力の低下によりB級2組まで落ち、さらにはC級への陥落危機にある。もしC級陥落なら引退するという宣言をするが、現実のこととなりつつあり、本人も周囲もあせる。取るべき道は2通り。プライドを持ったまま潔く引退の道を選ぶか、プライドを捨てて若手に頭を下げて教えを請うか。どちらも選べない彼は両方並立の道を探すが、誰にも相手にされず邪魔者扱いされるだけ。奇しくも最終戦は主人公のライバルで、過去順位戦全勝を続け、順位が低いため全勝することで文句なく昇級を決めようとする相手。降級と昇級をかけた大一番が控えていた。

作者はおそらく将棋組織の規則に疎いのだろう。またしても女流棋士昇級規定を間違えている。
以前も第5巻で、一番弟子のプロ入りに関して、マイナビ本戦進出を果たしているのだから、研修会C1昇級と同時に、女流3級ではなく女流2級でプロ入りのところ、女流3級と表記していた。おそらく間違いを指摘されたのだろう、6巻ではさりげなく女流2級になおしてあった。しかし今回もやらかして、マイナビ本戦ベスト4入りが決まった時点で女流初段に昇段のはずなのに、2番弟子を女流1級と表記している。架空の棋戦なら規定を好きに変えれば良いのだが、マイナビ女子オープンのみ実在の棋戦を使っているのだから正しくしてもらいたいところ。

今回は一番弟子と姉弟子は対局場面がない。まあプロ棋士がたくさんいるのだから、誰かが削られるのは仕方がないが、前巻で2番弟子に重大な欠点があるとほのめかしておきながら、それが書かれていないのは出し惜しみか。次回に出すのだろうか。
出し惜しみと言えば、主人公に関東では別のあだ名が付けられていると臭わせておきながら、結局何と呼ばれているのか書かずじまい。ちょっと気持ち悪い。

師匠の最終戦の対戦相手、はっきり言わずに延ばしておきながら、巻頭口絵でしっかり対戦場面を描いていれば何のために出し惜しみしたのやら。
口絵と言えば、一門会での挨拶の口絵と本文で、並び順が違っているのだが。

今回の主人公、天狗になりすぎて気分が悪かったが、最後に鼻をへし折られるという前振りになっているのだが、それでもやっぱり自信過剰すぎるのが気分良くない。結局は姉弟子にすがって泣き続ける場面につながって、二人の距離がぐっと近づいたということになるのだろうが。それにしても今回は姉弟子が素直すぎるくらい素直で、かなり拍子抜けしてしまう。まあ成長していくと言うことなんでしょうが。

今回は伏線が多く、次回に続くという部分が多くて、それはそれでいいのだが、次作は舞台が春になって新しい状況もふえるのでしょうね。「感想戦」の部分がどうなるのかも楽しみだが。

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アニメ「りゅうおうのおしごと」 [見たよ聞いたよ]

昨日から始まったアニメ「りゅうおうのおしごと」。思いっきり期待はずれでした。

原作冒頭の、将棋を知らない人に思いっきり勘違いさせる描写、コミックでは再現していたけれど、TV地上波では難しいからカットするのは仕方がないとしても、本編最初のエピソード、師匠との記念対局までカットするのはどうなんだろう。まあオシッコがテーマだから放送では難しいのかもしれないが、いろいろ省略かけながらでもできたのではないだろうか。あの部分、人物紹介も兼ねてるんだから、導入として必要だと思うのだが。

導入と言えば、原作冒頭の、大坂城での花見がてらの練習将棋の場面も、本編に入るための導入とした方が物語としては適切と思えるのだが、そうでなければ、主人公の意識の変化など伝わらないように思える。

いろいろカットが多すぎる。主人公が弟子入りする時の話とかもやはり必要だし、「弟子を取る」ということの意味などもばっさり切ってしまうのでは深味が全然伝わらない。

初めて将棋会館に連れて行って、道場での対局なども、原作ではとてつもない才能を見せつける重要な場面なのに、それもあっさりカット。いったい脚本家は何をしたかったのか。さらにJS研メンバーももっと後に登場するのに、いきなり全員集合はないんじゃないだろうか。登場人物紹介のつもりなんだろうが、ここで全員集合させる必要ないし、そもそも、もっと重要な人物は後にならないと出てこないんだからこういう演出にはまるで意味がない。小出しでもいいんだし。

現在コミックが6巻まで出ているけれど、この第1回でコミック第1巻を全部やってしまった。この後どうするんだよ。どうにもこうにも脚本のまずさばかりが目に付いてしまう。

主人公のライバル登場。あの独特のカタカナ語が出て来るのだが、まったく説明も何もない。テロップ出すなりなんなりできるでしょう。原作知っている者だけがわかればいいのかよ。まあ深夜放映だから、コアな人たちだけが見ているという前提なんだろうか。
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視聴率 [見たよ聞いたよ]

視聴率って「期待値」だってこと、なんで誰もわからないのだろう? 今年の紅白が歴代ワースト3位っていうのも、期待されてなかっただけのことで、見なかった人は損したはず。まあ録画した人や振り返りでも見られるから今の時代は。 連続ドラマでも初回の視聴率なんか内容とは関係ない。評判だけの数字であって、面白ければ噂を聞いて2回目以降数字が上がるし、だめだったら急激に数字が落ちる。だいたい瞬間視聴率なんて意味ない。紅白で出演順が発表されている物などはその時間にチャンネルを合わせる人もいるだろうが、生放送の中継でその時間に何が起きるのか予想できるはずもない。番組内で視聴率アップの工夫を予告なしで行っても、見ている人以外には伝わらないのだから、誰もチャンネルを掛け替えてはくれない。そんなこともわからないで「瞬間視聴率」を騒ぐなど意味がない。 まあ紅白の数字が悪かったのは、昨年がひどすぎたから見ようと思わなかった人が多かったということであって、お年のデキとは無関係。だから他局で毎年同じシリーズを続けていて視聴率を取っているのは立派だと言える。昨年面白かったので翌年も見たいと思う人が多いと言うことなんだから。
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