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書評「りゅうおうのおしごと7」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

  • 作者: 白鳥 士郎
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/01/13
  • メディア: 文庫


2年連続「このラノベがすごい!」第1位を獲得したロリコン本格将棋ラノベ第7弾
今回も変態度は健在で、17歳主人公が2歳年下の「姉弟子」中学生女子を連れて、真面目な将棋の研究会後に毎度ラブホに連れ込み、変態プレイに明け暮れるという。いやいや一応社会的地位を得た少年が中学生女子を怪しげなホテルに連れ込む自体で、公になればいくら同意の下とは言え、炎上どころか責任問題で釈明会見を開かないといけないことになりそうなんだが。もしそうなったとして、おそらく姉弟子は「妊娠はしていません」とかの、誤解を生みそうな発言をしそうな気がするが。

今回は主人公の師匠、清滝鋼介九段が主役の物語。過去名人挑戦2回の実績を持ちながら、棋力の低下によりB級2組まで落ち、さらにはC級への陥落危機にある。もしC級陥落なら引退するという宣言をするが、現実のこととなりつつあり、本人も周囲もあせる。取るべき道は2通り。プライドを持ったまま潔く引退の道を選ぶか、プライドを捨てて若手に頭を下げて教えを請うか。どちらも選べない彼は両方並立の道を探すが、誰にも相手にされず邪魔者扱いされるだけ。奇しくも最終戦は主人公のライバルで、過去順位戦全勝を続け、順位が低いため全勝することで文句なく昇級を決めようとする相手。降級と昇級をかけた大一番が控えていた。

作者はおそらく将棋組織の規則に疎いのだろう。またしても女流棋士昇級規定を間違えている。
以前も第5巻で、一番弟子のプロ入りに関して、マイナビ本戦進出を果たしているのだから、研修会C1昇級と同時に、女流3級ではなく女流2級でプロ入りのところ、女流3級と表記していた。おそらく間違いを指摘されたのだろう、6巻ではさりげなく女流2級になおしてあった。しかし今回もやらかして、マイナビ本戦ベスト4入りが決まった時点で女流初段に昇段のはずなのに、2番弟子を女流1級と表記している。架空の棋戦なら規定を好きに変えれば良いのだが、マイナビ女子オープンのみ実在の棋戦を使っているのだから正しくしてもらいたいところ。

今回は一番弟子と姉弟子は対局場面がない。まあプロ棋士がたくさんいるのだから、誰かが削られるのは仕方がないが、前巻で2番弟子に重大な欠点があるとほのめかしておきながら、それが書かれていないのは出し惜しみか。次回に出すのだろうか。
出し惜しみと言えば、主人公に関東では別のあだ名が付けられていると臭わせておきながら、結局何と呼ばれているのか書かずじまい。ちょっと気持ち悪い。

師匠の最終戦の対戦相手、はっきり言わずに延ばしておきながら、巻頭口絵でしっかり対戦場面を描いていれば何のために出し惜しみしたのやら。
口絵と言えば、一門会での挨拶の口絵と本文で、並び順が違っているのだが。

今回の主人公、天狗になりすぎて気分が悪かったが、最後に鼻をへし折られるという前振りになっているのだが、それでもやっぱり自信過剰すぎるのが気分良くない。結局は姉弟子にすがって泣き続ける場面につながって、二人の距離がぐっと近づいたということになるのだろうが。それにしても今回は姉弟子が素直すぎるくらい素直で、かなり拍子抜けしてしまう。まあ成長していくと言うことなんでしょうが。

今回は伏線が多く、次回に続くという部分が多くて、それはそれでいいのだが、次作は舞台が春になって新しい状況もふえるのでしょうね。「感想戦」の部分がどうなるのかも楽しみだが。

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アニメ「りゅうおうのおしごと」 [見たよ聞いたよ]

昨日から始まったアニメ「りゅうおうのおしごと」。思いっきり期待はずれでした。

原作冒頭の、将棋を知らない人に思いっきり勘違いさせる描写、コミックでは再現していたけれど、TV地上波では難しいからカットするのは仕方がないとしても、本編最初のエピソード、師匠との記念対局までカットするのはどうなんだろう。まあオシッコがテーマだから放送では難しいのかもしれないが、いろいろ省略かけながらでもできたのではないだろうか。あの部分、人物紹介も兼ねてるんだから、導入として必要だと思うのだが。

導入と言えば、原作冒頭の、大坂城での花見がてらの練習将棋の場面も、本編に入るための導入とした方が物語としては適切と思えるのだが、そうでなければ、主人公の意識の変化など伝わらないように思える。

いろいろカットが多すぎる。主人公が弟子入りする時の話とかもやはり必要だし、「弟子を取る」ということの意味などもばっさり切ってしまうのでは深味が全然伝わらない。

初めて将棋会館に連れて行って、道場での対局なども、原作ではとてつもない才能を見せつける重要な場面なのに、それもあっさりカット。いったい脚本家は何をしたかったのか。さらにJS研メンバーももっと後に登場するのに、いきなり全員集合はないんじゃないだろうか。登場人物紹介のつもりなんだろうが、ここで全員集合させる必要ないし、そもそも、もっと重要な人物は後にならないと出てこないんだからこういう演出にはまるで意味がない。小出しでもいいんだし。

現在コミックが6巻まで出ているけれど、この第1回でコミック第1巻を全部やってしまった。この後どうするんだよ。どうにもこうにも脚本のまずさばかりが目に付いてしまう。

主人公のライバル登場。あの独特のカタカナ語が出て来るのだが、まったく説明も何もない。テロップ出すなりなんなりできるでしょう。原作知っている者だけがわかればいいのかよ。まあ深夜放映だから、コアな人たちだけが見ているという前提なんだろうか。
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視聴率 [見たよ聞いたよ]

視聴率って「期待値」だってこと、なんで誰もわからないのだろう? 今年の紅白が歴代ワースト3位っていうのも、期待されてなかっただけのことで、見なかった人は損したはず。まあ録画した人や振り返りでも見られるから今の時代は。 連続ドラマでも初回の視聴率なんか内容とは関係ない。評判だけの数字であって、面白ければ噂を聞いて2回目以降数字が上がるし、だめだったら急激に数字が落ちる。だいたい瞬間視聴率なんて意味ない。紅白で出演順が発表されている物などはその時間にチャンネルを合わせる人もいるだろうが、生放送の中継でその時間に何が起きるのか予想できるはずもない。番組内で視聴率アップの工夫を予告なしで行っても、見ている人以外には伝わらないのだから、誰もチャンネルを掛け替えてはくれない。そんなこともわからないで「瞬間視聴率」を騒ぐなど意味がない。 まあ紅白の数字が悪かったのは、昨年がひどすぎたから見ようと思わなかった人が多かったということであって、お年のデキとは無関係。だから他局で毎年同じシリーズを続けていて視聴率を取っているのは立派だと言える。昨年面白かったので翌年も見たいと思う人が多いと言うことなんだから。
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映画「探偵はBARにいる 3」 [書評・映画評]

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札幌を拠点とする主人公の探偵(大泉洋)は、相棒である北大農学部助手の高田(松田龍平)が連れてきた後輩の学生から依頼を受ける。恋人である女子大生麗子(前田敦子)が行方不明になっているという。10800円の礼金で気軽に引き受けたが、実は大手ヤクザ組織の麻薬密売にからむ事件に巻き込まれていたと言うことが判明する。彼女が隠れてバイトをしていたモデルクラブを装う売春組織に潜入し、そこの経営を任されているマリ(北川景子)に出会うが、過去に会ったことがあるような気がした。実は数年前に路地で抜け殻のようになっていた彼女の世話をしたことがあったのだった。数年で何があったのか。そして彼女からも別の依頼を一方的に受けさせられて、またまた探偵は殺されそうになるのだった。しかも相手側には空手の達人である高田をもってしても勝てない男(志尊淳)がついていた。
おまけに依頼主の学生の話では、高田はニュージーランドの教授の下に学びに行くことが決まっているので、どうやらこれが二人で組む最後の事件になりそうだった。

「1」と「2」は映画館で見る機会を逸したまま、たまたま日本映画専門チャンネルで見てはまってしまった。だから劇場で見るのは今回が初めて。やはり映画は劇場で見るものだ。
このシリーズ、ヤクザがからんで殴り合いの場面が多いのだが、この世界観にはまってしまう。このシリーズヒロインを取り巻く環境が悲しすぎて後味が悪すぎる。やりきれなくなってしまう。でもそれがこの映画の魅力なのだが。

最後の最後、この映画らしく笑わせて終わってくれる。どうやらまだ続編があるようだ。設定に嘘がないのが笑わせる。
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映画「鋼の錬金術師」 [書評・映画評]

ハガレン.jpg
原作ファンにはめちゃくちゃ評判の悪い実写映画。
うちの娘もハガレンファンでコミックもアニメも見ていたので、僕はそんなに見てはいないのだが、一応設定とか内容とかは大まかには知っている。もっとも、カタカナ名前の登場人物が出て来る物語は他の小説とかでも苦手というか、イメージがつかめなくて誰が誰やらわからなくなるなどであまり読む気はしないから、このコミックもほとんど知らない。

で、結論から言えば、そういう者にとって向いている映画だと思う。すなわちそんなに思い入れもないけれど、その世界観はある程度理解している。

原作を知らない人には面白いかもしれないと言われているが、原作を知らなければ、何のことだかさっぱりわからないと思える。

架空の世界、科学と魔術を融合させたような錬金術が存在する世界。無から有を産み出すのではなく、等価交換、正確な原材料を使って別物を生成する技術。
母を亡くした少年が、人間の化学成分を集めて母親を再生しようとして失敗。愛する弟をも失いかけ、自らの身体を犠牲にして魂だけは呼び返したが、その身体は空洞の鎧。弟の身体と母を蘇らせるため、莫大なエネルギーを秘めた「賢者の石」を求めて錬金術師となった少年の冒険譚。
しかし精製に成功したとされる人造の賢者の石には恐るべき事実が隠されていた。

原作の中の一部を元に映画化されたのだが、原作となったエピソードは悲しすぎて読む気にはなれない。
そしてやっぱりカタカナ名前の人物にはついていけなかった。
面白いことは面白いんだが。
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書評「邪魅の雫」 [書評・映画評]

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: 文庫



京極夏彦の百鬼夜行シリーズの一番新しい奴。
6人の連続殺人事件。しかし6人に何の共通点もなく、関係も見当たらない。ただ一つ、最後の1人を除く5人の殺害に使われたのが、特殊な毒薬であったというだけ。
時系列では白樺湖の事件の直後の亀捜索事件から一週間後と書かれてる。そして、先の事件で巡査に降格された青木刑事が後の事件で再び刑事として登場しているが、彼が刑事に復帰したいきさつが書かれている。ようするにこのシリーズは時系列が発表順ではなく、けっこう入り組んでいることを表している。薔薇十字探偵社シリーズの語り手である本島氏が名前だけひと言だけ出て来るのもご愛敬。

薔薇十字探偵社に榎木津礼次郎の従兄弟がやってくる。榎木津に持ち上がった3件の縁談話があり、相手側が乗り気なのにもかかわらず、まだ会いもしないうちに3件とも相手側から断りの連絡が来る。しかもその内の一人の相手の妹の女学生が、場所も離れた大磯で殺されたという。他の家でも断りの事情を告げず、3件の家に何らかの事件が起きているのではないか、榎木津の縁談をぶちこわそうとする人物がいるのではないかと言われ、榎木津本人が聞いていないことを良いことに、探偵見習いの益田に調査するように言われる。
困った益田は、榎木津の縁談を邪魔するような女性がいるのではないかと、京極堂に話を持ちかけ、その場にいた暇そうな小説家の関口とともに調べることに。
そして推測したのは、縁談相手3人とも誰かにレイプされそれで破談にしたのでは。そして、どうやらそのうちの一人が行方不明になっているらしい。
詳しい調査を行うために二人は殺害事件のあった大磯に向かう。

大磯に住む画家の西田新造は、モデルの女性が怪しい男にストーカーされていることを知って。話はほとんどしたことがないが幼なじみであり新聞記事で警察署長をしていると知った石井警部に相談する。ストーカーだけでは逮捕も何もできないと聞かされ、ならば自分が殺すしかないかもと思い込む。ちなみに殺人罪について聞くと、事情があれば10年ほどの刑だろうと聞いて、殺意を深める。石井刑事はその時の会話をなんとなく気にはしていた。

先の事件で降格した青木巡査は、通報を受けて商社マンの死体を発見する。外傷はなく毒物による物らしい。しかしなぜか組織的犯罪・社会的重大事件などを扱う公安が乗り込み捜査陣は不安を感じる。しかしなぜか連続殺人事件に指定されて警察合同会議が中心となるが、そのことにも疑問を感じる。先輩の不良刑事(降格してこれも今は巡査)木場に相談すると、毒物が特殊な物ではないかと言われ、上司に進言。ならば刑事に戻ってお前が独自調査をしろと言われる。京極堂を訪ねて毒物について相談すると、戦時中に開発が進められたが終戦で中止になって完成されていないはずの毒物の可能性がある。公安の刑事も被害者もその開発に関係していた可能性があり、その毒物をすみやかに回収するために公安が乗り出しているのだろうと聞かされる。そして操作に割り込む切り札を教えてもらった青木刑事は、同じ毒物で殺された女学生殺害事件があった大磯に向かう。

白樺湖事件で警察が嫌になり、突然退職して失踪した元巡査の大鷹篤志はあてもなく大磯にやってきた。そこで出会った女性真壁恵に厚かましくも格安の宿を紹介して欲しいと頼み、代わりにある女性の護衛を依頼される。いい加減な彼はあきらかに不審な尾行を重ね、さらにはその女性の行動が時間通りに正確であることから、その日も何も起こるはずがないと勝手に思い込んで手抜きをするが、その日その女性が殺害される。自分の責任は棚に上げ、一番怪しいのがつきまとっていた自分だと調べられていることを聞いても意に介せず、敵討ちをしないとと思い込む。

大磯の酒屋の従業員江藤徹也は、店に時々やって来る女性が気になっていた。たまたま届け物があった日、彼女と話が出来ると楽しみに家に寄るが、そこで彼女の死体を発見する。第一発見者として交番で話をするが、入ってくる情報は驚かされることばかり。彼女は偽名であり住所も不定。そして女学生と同じ毒物で殺されたことが判明して連続殺人事件と認定される。江藤は知っていた。その殺された女学生のことを。そして連続殺人ではないことも。

こうして大磯で次々起きる殺人事件に、容疑者・被害者を除くすべての関係者が大磯に集結。情報を付き合わせて6人全員の身元が判明するが、それでも共通点は見られない。唯一可能性があるのが、その何人かに榎木津礼次郎が関係していること。その彼等の前に現れたのは、事件のことは知らないはずなのに、何かを探しにやって来た榎木津礼次郎その人だった。
そして憑きもの落としにやって来た京極堂が、これらは別々の世界の物語だと考えないといけないと延べ、6人すべてに関係するある人物を指摘するのだった。


今回の作者の遊びは、各章の1行目に「死」に関係する言葉を入れていること。そして、プロローグのみ、「勘違い」という言葉で始めている。すなわち、この連続殺人事件は「勘違いによる殺人事件」をほのめかしている。

いつものことだが、記述者が多くて読みづらい。しかも数人は殺害をほのめかす人物であったり、殺害を行った人物だったり、異常な犯人の記述と思うと読むのが嫌になって読み飛ばしてしまう。

しかし、ラストで京極堂の解説を読んで、目から鱗というか、全体が意図する物が見えた瞬間にすっかり腑に落ちる。読みづらかった理由もはっきりして、この小説は結末を知ってから読んだ方が面白いことに気がつく。すると読み飛ばしていた部分が意味が明確になって読みやすくなったり。

ゲームでは舞台や登場人物が同じでありながら物語内容が異なる○チストーリーというのがあるが、これを推理小説でやるとこうなるんだと。記述者はあくまで自己体験の記述であって、神の視点ではないと言うことを強調するとこうなるという見本。

しかし相変わらず京極堂の説明は長くて難解。はっきり言って大学の授業。こんなのを現実でおとなしく聞いている事件関係者などいるわけがない。いっぱい突っ込みどころまんさいなのだが。


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コミック「3月のライオン 13 」 [書評・映画評]


3月のライオン 13 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 13 (ヤングアニマルコミックス)

  • 作者: 羽海野チカ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2017/09/29
  • メディア: コミック


明日発売なのに、なぜか今日本屋に並んでいた。

空前の将棋ブームの立役者の一つ。
しかし、この春公開された映画を見るまで大きな勘違いをしていることに気がついた。
この「3月のライオン」の世界は、現実の将棋界を完璧にトレースしていると思っていたのだが、実は一つだけまったく違う世界観で描かれていた。それは、この世界には「女流棋士」という物が存在しないと言うこと。もちろん、プロ棋士でいまだかつて女性がプロ棋士になった事実はないが、そのことではなく、どの世界でも女流プロという女性だけの団体が存在するのだが、このマンガの世界では、将棋を職業にしている「女流プロ」という存在さえないということ。

このことは実は重大なことであって、主人公の義理の姉・香子がプロ棋士を目指していた時、そこには奨励会しか存在していなくて、そこで無理なら将棋の世界で生きていくことが出来なくなってしまうという事実。
現実の世界では、過去に何人もの女性の奨励会員が存在したが、彼女らは奨励会2級以上で退会すれば女流プロに鞍替えすることが出来、全員が女流プロになり、しかも全員がタイトル戦出場経験を持っている。もちろん、父親がプロ棋士でその娘が女流プロになった例もいくつもあるのだが、この「3月のライオン」の世界では、女流プロという物が存在しないために、奨励会を退会すればプロ棋士になる夢は断ち切られてしまう。そのことを前提として物語を読まなければいけなかったのだが、そのことに気づいたのがつい最近という。これで長年の謎が解けた。

閑話休題。

今回の第13巻はいつものことではあるが内容が深い。で、これまでと違って、ハラハラしながら読む場面も無く、安心して読める。もちろん対局場面はドキドキ物だが、不安感無く入り込める。
また、盤外の物語も引き込まれる。前巻ラストで予感された三角関係がどう展開するのか、まだまだ先は長そう。で、暗くてたまらないはずの死神男・葬儀屋の棋士の物語も心に響いたり。それから香子の物語も映画での展開をトレースしていくようで、この先がとても気になったり。

話はどんどん進んでは行くのだが、いつまでも続いて欲しいように思う。

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映画「三度目の殺人」 [書評・映画評]

三度目の.jpg
殺人放火を犯した男は、かつて同様の事件で死刑になりそうな所を懲役30年の刑を終えて出たばかりだったため、再犯と言うことで死刑は免れなかった。敏腕弁護士が途中から担当に加わるが、結局死刑判決が出るまでの、ただそれだけの物語。

いろいろな事象がついてまわるが、やたら伏線を取り入れただけで、回収しきれないまま終わってしまうだけの、原案・監督の独りよがりの作品。

保険金目当ての嘱託殺人事件やら、家庭内レイプ問題やら、食品偽造問題やら、死刑廃止論是非とか、弁護士側にも離婚調停中の父親の歓心を得たいための一人娘による偽装万引きとか、30年前の事件の裁判官が弁護士の父親だとか、詰め込めるだけの物を一杯詰め込みながら、なんら回収しない。

もちろん弁護士には、調査中に知り得た依頼人の秘密を公表してはいけないという守秘義務があるから、食品偽造なども検察側が立件しない限り明らかにはされない。また被害者の娘が父親からレイプを受けており、それを公判で明らかにしようと決意しながらも、相談を受けていて、同じ年頃で別れて30年も会っていない自分の娘を思い描いた犯人の意志によって阻止されてしまうとか、闇の中に埋もれさせてしまおうという意志が強くて、結果として何も進展しない物語で終わってしまった。

なにもかもが中途半端なんだよね。犯人と弁護士、被害者の妻と娘にいい役者をそろえながら、顔見せだけに終わってしまったかのような印象。

タイトルの「三度目」というのは何だろう。2度目で死刑判決が出たから三度目を阻止できたと言うことなのか、犯人自身が三度目として選んだのが自分自身だと言うことなのか。自分を殺すのは殺人ではなく自殺になるのだが、本来無罪である自分に対して死刑という有罪判決を導き出したことが、罪の無い人間を殺す殺人と言うことになるのだろうか。

いずれにせよ、被害者の娘は、自分のために犯人を死刑にしてしまったという負い目を一生背負っていくことになるのだが。
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書評「陰摩羅鬼の瑕」 [書評・映画評]




白樺湖の側の豪邸に住む元伯爵が5度目の結婚式を迎えようとしていた。
過去4度、結婚式の当日夜に花嫁が殺されるという事件が起きていたため、親族は探偵を雇うことを提案。元伯爵はよりによってぶちこわし屋の榎木津礼次郎を招きよせる。しかし向かう途中で榎木津は急病で一時的に目が見えなくなる。結果、付き添いとして役立たずの小説家関口が来ることに。はたしてぶちこわし屋と役立たずに任務が果たせるのか。

うまい具合に、地元警察も護衛に付くことになり、過去の事件の資料が戦争で消失しているため、当時の担当で引退刑事に事情を聞くことに。しかしちょっとした手違いで、連絡が木場刑事に行ってしまう。しかし引退刑事がかつて京極堂とある事件に関わっていたことを知っていた木場は、その事件に関わっていた監察医の里村を通じて引退刑事を捜し当てることに成功。妻子を亡くして隠遁生活をしていた引退刑事は過去のその事件や亡くなった妻との関係を引きずっていて、憑きもの落としを必要としていたため、木場は事件のことを京極堂に告げるように提案する。

かくして、役立たず二人でどうなるかと思われた事件に、元敏腕刑事と京極堂が関わることとなって一安心、と思うまもなく、彼等が到着する前に5回目の惨劇は起きてしまう。

今回珍しく、いつもはワトソン役の関口が事件の真相に気づいてしまう。しかし真相を告げることが少しも解決にならず、かえって混乱と破壊を招くこととなることを知って躊躇するが、京極堂は憑きもの落としに必要だと告げさせる。はたしてその真実とは。

と言ってもだいたい途中で気づいてしまうのだが、だが混乱を呼ぶだけの真実には、うーん、そこまでしますか、と思ってしまう。
そして、伯爵が男性でなくて女性だったらそういうこともあるのかと思えるかもしれないが、さすがに無理があるような気もする。

そしてあの事件の目撃者は一体そこで何が行われているのを目撃したのだろうか。そこで行われている行為が理解できない。人間も動物の一種であり、動物的本能とは何だろうかと思ってしまう。誰も実験したことないのだが。

この物語、薔薇十字探偵社の事件の第2話に直接つながる話となっているのが時系列的に面白いのだが、全然関係ないとも言えるけれど。

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書評「百器徒然袋――風」 [書評・映画評]


文庫版 百器徒然袋 風 (講談社文庫)

文庫版 百器徒然袋 風 (講談社文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/10/16
  • メディア: 文庫


前作「百器徒然袋――雨」の続編。京極堂シリーズのスピンオフであり、薔薇十字探偵社での事件を扱った物。前作が3話、今作も3作で、ど「僕」の苗字が明かされ、今作のラストで、読者も驚きの手段で本当の名前が明かされる。ということで、もう明かされる事実はない。
明かされたストリーテラーが実質主役なんだろう。このシリーズ、正確に表現するならば、「本島俊夫の災難シリーズ」と呼べばいいのかも。

合わせて6話の第1話で、榎木津探偵を知る人物から紹介されて事件の依頼に訪れたのが運の尽き。2・3話では興味もあったので、再三再四の忠告にもかかわらず近づいてしまって、とんでもない事件に巻き込まれて、もうたくさんというところで、今作では二度と近づくまいと決心したのにもかかわらず、不可抗力で関わることに。

後半の3話は連続したストーリーとなっていて、4話の事件をきっかけに6話でもってようやく解決するという、それぞれが独立した物語になってはいるが、続けて1巻という設定。そしてラストでは、主人公である本島俊夫が、もう彼等一味とは切れない関係になってしまったことを自覚することになる。

この4~6話、やけに本島俊夫の語り部分、プロローグが長い。そして、どういうわけか非常識探偵榎木津がまともな行動を取る場面も出て来る。
そもそも彼はあのキャラを実は演じていると言うことが明かされる。名前を少しも覚えてくれないというのも実は嘘で、知っているのに、単に面白いからからかっているだけだという。まあ冷めてしまうととたんに物語が面白くなくなってしまうのだから、ここが限界なのかもしれない。

ちなみに娘はこれを持っていなかったら、ブックオフまで行って購入してきた。

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