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書評「よるのばけもの」 [書評・映画評]


よるのばけもの

よるのばけもの



中学生男子のあっちー、こと安達は、ある夜から毎夜、突然
ばけものの姿に変身しだした。最小限の形は決められているが、
自分の思うままの大きさに変えられ、移動速度も思うまま。
わずかな隙間をすり抜けることもできる。後に言われて気づく
のだが、自分が願う特殊能力も持てるようだ。

最初は驚きもしたが、慣れてくると毎夜散歩をするようになる。
夢でないことは、移動して誤って踏みつぶしたある家の犬小屋
朝になっても壊れたままだったことからもわかる。

そしてある夜。学校に宿題を置き忘れたことに気づき、取りに
行くと、夜の教室に一人の女生徒がいた。クラスで嫌われ者の
矢野さつき。ばけものの姿にもかかわらず、彼女はそれが
あっちーだとすぐにわかった。そしてその夜から二人だけの
奇妙な夜の休み時間が始まった。

あっちーのクラスは平和なクラスだった。しかしそれは一人の
人物に支えられた平和。クラス内のイジメ・嫌がらせを一気に
引き受ける人物がいたから。それが矢野さつき。クラス内で
他にいじめられそうな女子生徒が見つかると、その子がイジメに
遭う前に、矢野が真っ先にその子に強烈な嫌がらせをし、
その結果その子に同情が集まり、イジメの対象にはならず、
しわ寄せが一気に矢野に押しかかる。矢野には昼の休み時間は
なかった。だから夜の休み時間なのか。

その矢野にあっちーは問われた。
あんたはどっちが本物なの?

人間が本物でばけものに変身しているのか。ばけものが本物で、
昼間だけ人間の姿をしているのか。

クラス全員が矢野イジメを容認している。
積極的にいじめる者。たまに協力する者。見て見ぬ振りをする者。
あっちーもその中にいる。イジメはいけないとわかっていても、
自業自得だ、わざわざ問題を自分から作ることがいけないんだ、
自業自得だと自分に納得させている。

しかし毎夜矢野に会い、話をしていて自分と興味関心が似ている
ことに気づく内、複雑な思いが湧いてくる。夜は夜、昼は昼、
使い分けているけれど、そのうち自問していく。
自分は果たしてどっちが本物なんだろう。


作者は不親切である。
事件を起こしても解決してくれない。ある事件の真犯人が誰なのか
明かす気もないらしい。登場人物の背景も教えてくれない。
あっちーがなぜ保健室の先生に心配されているのか。矢野の背景が
何なのか。もう一人の不思議少女と矢野の謎の関係、何が二人に
あったのか。何も答えてくれないどころか、物語は突然終わりを
告げる。平和なクラスにあっちが投げかけた波紋。それが一体
どのような結果を生み出すのか、その答さえ用意されていない。
続きは自分で考えろってのか?

主人公あっちーはたぶん気づいているのだろう。なのにあえて
気づいていないふりをしている。それは同時にクラスメイトの
大半が気づいているのに気づいていないふりをしているのに
似ている。見かけと実際が異なること。一体どっちが本物なんだろ。
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