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書評「花の鎖」 [書評・映画評]


花の鎖 (文春文庫)

花の鎖 (文春文庫)



同じ町に住む「花」「雪」「月」を名前に持つ3人の女性の物語。
全体で6章まであり、各章に3人の物語が並行して描かれている。

と言っても湊かなえのことだから油断してはいけない。
だまされるな。
第1章を読んだ直後から感じていた。同じ町の商店街、
花屋に和菓子屋が出てきても、同じ時間軸にいるとは
限らないぞ。クロスオーバーする人物が出てこない限り、
おそらくは時代が違う可能性がある。
共通して出て来る人物もいることはいる。しかしその
人物は、すでに亡くなっている、この町にゆかりのある
世界的な画家。その画家の描いたある幻想的な絵が重要な
鍵として3つの物語をつないでいく。

第2章以降を読んで、確信した。時間軸がずれていると。
そして第5章に入ってネタばらしが始まる。クロスオーバーする
人物が現れた。しかし年齢に明らかな違いが。

最終第6章に入ると、解決編になるのだが、ここでこれまでの
パターンを捨てた。これまで「花」「雪」「月」の順に
書かれていた物語が、順番を変え、「雪」「月」「花」の
順になっている。そして第6章のみ章題がつけられた、
「雪月花」と。
この言葉を聞いてすべて合点がいった。
それと同時に、この物語の主人公は「花」なんだなとも。
いわゆる「花」で始まり「花」で終わる。第1章で大きな謎を
持ち込み、最終章でその謎が明かされる。それも「花」の
物語部分で。

もちろん途中にヒントもくつかある。

「花」には祖母と母と本人の関係がしっかり書かれているが、
「雪」で出て来るのは自分と夫とのことのみ。母もいるには
いるがほとんど登場しない。
「月」には母子家庭として母との関係のみが描かれる。

「花」の祖父は早くに亡くなっており、両親が事故で二人とも
同時に亡くなっている。家族に男は現在いない。
「雪」夫妻にはまだ子どもはいないが章がすすむと妊娠
思わせる描写が出て来る。そして「雪月花」。
「月」の父親は本人が生まれる前に亡くなったと言う。

「花」の家に毎年豪華な花束が「K」というイニシャルだけで
贈られてくる。「K」とは一体誰なのか?それが全体を貫く
ミステリーにもなっている。
「月」に1回だけ「K」のイニシャルでの手紙が届く。
もっとも差出人は大学時代の友人で、今は絶縁している相手と
すぐにわかるが。
「雪」では夫がサインとして「K]と書いたことが一度だけ出て来る。
もっとも3人とも周囲にはイニシャル「K」の人物は一杯出て来るが。


3つの物語はいずれも中盤まで湊かなえ特有の暗い物語である。
これが短編小説の連作なら、1つ終わって気分をリセットして
読み進めればいいのだが、3つの物語が並行して書かれる
この小説は、暗さが3倍になって、かなり読みづらい。
希望の光は、この3人の関係を推測して、それぞれに出て来る
登場人物が、他の話ではどこにあたるのかを考えながら
読むことだけ。気分的に重かった。
だから第5章でやっとクロスオーバーし始めて、3人の繋がりも
理解できて気分は落ち着いた。

並行して書かれてはいるが、実際には長い大河ドラマなんだろうな。
で、実は3作とも主要人物として一人だけ通してで出てきている
人物がいるんだということにやっと気づいた。気づくの遅いよ。
この人物からの視点で描くと、また違った物語になったんだろうな。
まあありえないだろうが。

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