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書評「死の天使はドミノを倒す」 [書評・映画評]


死の天使はドミノを倒す (文春文庫)

死の天使はドミノを倒す (文春文庫)



オラース・ヴェルネという実在の画家が描いた、実在の絵画を
モチーフにした、というか、この絵にインスパイアされて
書いたのか、解説には何も書かれてはいないが、おそらく
そのような経過で書かれた物だろう。ミステリー

疑いようもなく加害者が有罪であると思われる事件ばかりを
引き受ける弁護士がある日、裁判途中でありながら行方不明と
なる。兄で、かつては売れっ子作家ではあったが、今は落ちぶれて
その日の暮らしにもことかく男が、必要に迫られて、弁護士を
批判する連載記事を書いている雑誌記者に連れ回されて、連絡が
取れない弁護士を探すことに。
そこで出会う、弁護士が引き受けていた凶悪事件、そして
自殺相談員でありながら、自殺をそそのかしていたことが判明して
逮捕された女性、そして、表題の謎の絵と、天使の羽を持って
いたと思われる、羽をもがれた球体関節人形。深まる謎の果てに、
予想すら出来なかった結末が待っていた。

ちょっと押すだけでバタバタと次から次へと倒れていてしまう
ドミノ。そのように落ちぶれてしまった主人公と、ちょっとの
行為で人の生死が決定する時、最初の行為がどれだけ問われるのか。

太田忠司というミステリー作家は実に幅の広い作家である。
ミステリーには3種類ほどの違いがある。謎解きを主体とする
純粋ミステリーに、ミステリーを通して社会に何かを訴えかける
社会派ミステリー。ミステリーの場を借りてSFやファンタジー
世界を構築する娯楽系ミステリー。太田氏はそのどれをも得意と
している。
そして、この作品は言ってみると純文学ミステリーか。
主人公の心の深くに潜む感情を中心とした物語。主人公は別に
探偵でも刑事でもない。事件にはまったく興味を持っていない。
解決しようなどとも考えてはいない。行方不明の弁護士さえ
見つけ出せればいい。しかもそれは銀行に凍結されてしまった
父の貯金を手に入れるためだけ。だから弁護士が目指している
社会への問題提起も彼には関係がない。だからこれは社会派
ミステリーでもない。

ミスリードが2カ所用意されている。しかし、1つのミスリードに
意味があるとは思えない。ミスリードを知らされても、ふーん、
で終わってしまった。
もう一つの方はけっこう重要。思わず読み返したのだから。
もっとも、その他にも重要な伏線あるのだが、作者が思うほどに
読者はその伏線を重要視していない。太田さんの作品にはたまに
こういう、読者を驚かせようと趣向を凝らしながら、空回りする
部分もある。それってそんなに重要なのかな、って。

しかし、ドミノ倒しって、悪いことの連鎖ばかりでもないという。
倒れた結果美しい絵が実はできあがっているという。そういう
期待を抱かせる終わりになっていることが救いかも。
それと、殺人事件はいっぱいあるのだが、過去に死んだ人は
別として、この作品の中で出て来る登場人物が誰一人死んで
いないというのも太田さんらしいというべきか。


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