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書評「鉄鼠の檻」 [書評・映画評]


鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/01/05
  • メディア: 新書


どんな書物にも記録にも記されていない箱根の山奥にある謎の禅宗の寺で起きる連続僧侶殺人事件。ある目的のためその寺を訪れようとしたシリーズの登場人物一行の目の前で事件は起きていく。
その寺に一番近い辺境の地にある宿は、第1巻「姑獲鳥の夏」で事件の発端となったあの日に家族一行が保養に訪れた宿であり、「姑獲鳥の夏」の事件関係者が2人も登場。その事件の最終解決もなされていく。

また主人公一行の知り合いである新規人物が登場。冒頭はその人物の紹介も兼ねた独白で始まり、少々退屈かと思いきや、すぐさまに一行の目の前の庭で突如死体が降って湧いたように現れるミステリーが置き、それは呼び出された例の探偵によってすぐに謎解きはなされて退屈にはさせないという表現上の進歩が見られる。
もっとも誰が何のためにというミステリーは残されて、刑事を含めた一行がくだんの寺に向かうという展開もあるのだが。

主人公グループで1名、東京の刑事だけが今回登場しないが、彼はまったく同じ時に東京で起きている連続殺人事件にかり出されていたという話が次巻で明らかにされるのだが。

わかりづらい禅宗の宗派の状況が丁寧に説明されて歴史の勉強になる。まあ難しい仏教用語の連発ではあるが。
結果的には理解できないであろう犯人の動機に、これまた理解しにくい犯行現場の状況とか、説明はあっても、はあそうですか、と言うより他はない。
息をもつかせない展開でページがどんどん進んだのだが、最終的にあの謎の人物が、世間の噂通りのはずがあり得ないと思われているのに、結局は噂通りだったのはどんなものだろうか。これなら、あの殺された僧侶の犯行の意味がなかったりして。

あんな動機で犯罪が行われていたのなら、これまでも何人もの僧侶が殺されているはずなんだが、そこは不問に付されているのかな。戦争をまたいでいるから不明なことも多い時代だったのかもしれないが。

悟りを開くのが禅宗なら、結果的に事件を担当したあの刑事が悟りを開いちゃったりして。


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書評「狂骨の夢」 [書評・映画評]


狂骨の夢 (講談社ノベルス)

狂骨の夢 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/05/09
  • メディア: 新書


妻を捨て愛人と逃げた男は首を切られた死体で発見された。
追いかけた妻は首を持った愛人と橋の上で再会、もみ合う打ちに川に転落、意識を失う。川から助け出された女は記憶を無くしていた。助けた小説家と夫婦関係になって8年。戻ってきたと思われた記憶は、まったく異なる2つの幼少期の記憶であり、髑髏にまつわる夢に悩まされる。そして男を殺して首を切り取った記憶。
そして時を同じくして死んだはずの男が復員服を着て訪れ、男を殺して首を切り取ったのだが、何度も復員服の男がやってきては首を切り取っていく。

同じ頃、その地域で髑髏にまつわる異常現象が発生。そして幼少時から髑髏を中心とした性行為集団の夢を見続ける男が教会に世話になるが、その教会の牧師も幼少時の髑髏にまつわる異常体験をして救われない日々を送っていた。

そんな仲、女を助けた小説家が殺される事件が発生。陰陽師京極堂が乗り出すことに。事件の中心は明治初期の某有名宗教団体の事件から南北朝時代のことがら、さらには神話時代まで関わった壮大な物語となる


シリーズ第3段。毎回登場人物が増えていき、誰が主人公かもはやわからない。
前作で名前だけ登場した人物が語り手の一人として登場するが重要人物ではないことだけは確か。
登場人物が多すぎる割りに混乱が生じないのは、一人一人のキャラがはっきりしているためだが、言い換えれば詳しく描写をしすぎてその分本の厚みが増していく。とにかく読みづらい。殺人事件が最後の方に出てきて、それまでは何が事件なのかさっぱりわからず、何を解決したいのかさえわからない。

最後に京極堂が関係者を一堂に集めて謎解きを行うのだが、説明が長ったらしくて飽きが来る。よく事件の関係者がいらだたないものだと感心する。

結局はラグビーよろしく、髑髏を巡って5つの思惑が髑髏を奪い合いをするというだけの物語。京極堂じゃなくてもばかげた話だと思ってしまう。

余談ながら、これは映像不可能ですね。映像化するととたんにネタバレしてしまう。

実際には同じ年頃の女性が2人出て来るのだから、幼い時の記憶はその二人の記憶が合体した物と予想できる。しかしなぜ弐拾人格的になるのかは謎なのだが、そこをつきつめると、語り手が複数なのも意味があるのではないかと思われる。彼等が出会った女性から聞く話が微妙に違和感が生じている。たとえば男を殺す場面、一人が聞いた話では、女は男を殺す場面を記憶しているのだが、別の人物が聞いた話では男が殺された時には一日中憲兵に取り調べを受けているというアリバイが成立していて、その場面を見ていないはずだとか。
二人の女性が出会ってもつれ合って、妻が愛人の首を絞めるのだが、どうなったのかははっきりしていない。二人の記憶がからまったのは女が死んで霊が乗り移ったためではと思わせるが、それならミステリーにはならない。どう結末を付けるのかと思ったが、謎解きを聞くと一応納得は出来るが。なんとなくだまされた気分になったり。まあ大きな勘違いが起きて、結局はそこから来る悲劇になるのだが。

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書評「りゅうおうのおしごと!6」 [書評・映画評]


りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

  • 作者: 白鳥 士郎
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: 文庫


空前の将棋ブームである。
もちろん中心は最年少プロの藤井聡太四段。しかし彼がプロになる前から前兆はあった。
一つは実在の棋士村山聖の生き様を描いた映画「聖の青春」。
もう一つがコミック原作でTVアニメにもなり映画化もされた「3月のライオン」。
そしてもう一つが、変態ロリコン本格将棋ノベルであるこのシリーズ。
第1巻が発売された時、出足の鈍さから、作者も編集者もそんなには期待もしていなくて、作者自身が当初予定していた5巻で終了を予定していたのだが、将棋界では発売当初から注目されていて、その期待通り、何と昨年度の「このライトノベルがすごい」の第1位を獲得。おりからの将棋ブームでTVアニメ化も決定!

いいのか!

この変態小説がアニメになるなんて。第1巻の冒頭2ページ、あれが映像で流れるというのは恐ろしい物がある。当然深夜放送だよね。まかり間違ってもNHKってことはないよね。

ものすごい評判に浮かれることなく、今回も変態ロリコンは全開まっしぐら。
JS達によるお医者さんごっこから始まり、初詣に行った帰り、JS一行を家に招いて着物を脱がしていったり。とうとう中学生姉弟子とラブホに一泊してしまう。さすがに問題あるでしょ。
極めつけは、囲碁棋士の放送禁止4文字言葉を絶叫しまくる、とんでもなく危ないお姉さんの登場。実在モデルいるのなら教えて欲しい。

今回は主人公の対局場面は出てこないし、二人の弟子の対局もない。代わりにちょっと泣かせるエピソードがあったり。そしてメインは姉弟子の三段昇段をめぐっての戦いが2局。敵役となる相手は実在モデルがいて、モデル本人とはキャラが違うので迷惑かかるんじゃないだろうかと若干心配もする。ツンデレで素直になれない姉弟子はいつものごとく、行動だけは大胆すぎて主人公に正しく思いが伝わらない。ひと言きちんと言えばいいのにとやきもきしてしまう。まあ主人公の鈍感ぶり勘違いぶりはいつものことなんだけど、それも本人がきちんと言葉で言えばすむことなんだけど。まあJSとJCだからそれでいいのかと思うけれど。

今回も新登場人物がわんさか。実在モデルもいっぱいで、大御所の内藤國雄九段、奨励会で初めて新人王戦で優勝はしたが、年齢制限ギリギリでプロになったイケメン都成竜馬四段、奨励会を退会して三段リーグ編入試験に合格した物の期間内に上がれずに再び退会、再度プロ棋士編入試験に合格してようやくプロになった今泉健司四段、(名前からすると、編入試験制度を創設する元になった瀬川晶司五段もくっつけたみたい)、そして最年少プロの藤井聡太四段。
もっとも、小説内では今泉四段と藤井四段をモデルにしたと思われる人物は、ちょっと嫌なキャラにされている。まあ本人とは異なるのでいいんだけど。

今回の「あとがき」、月並みなんだけど、他の人が書いたのでは同じようなのがよく見られるんだけど、それでもじわっとしてくる。

前回でいつも出てくる観戦記者の正体をばらしたので、今回は堂々と書いてきた。この先どんな風にからんでくるのか楽しみではあるが。というか、この人の対局場面は一度も出てこないが、一回くらい出ても良いのでは思ったり。

何はともあれ、5巻で終わらずに続いてきたのはめでたいことだ。

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書評「魍魎の匣」 [書評・映画評]


魍魎の匣 (講談社ノベルス)

魍魎の匣 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/01/05
  • メディア: 新書


男がふと見ると、列車の中に一人の男が四角い箱を持って乗っている。声がしたような気がして問うと、男は蓋を開け、その中で、胸から上しかない美少女が笑って男を見た。

小説内幻想小説の書き出しかと思えば、本編の重要場面だったという。
京極夏彦の2作目。

二人の女子中学生が湖を見に行こうと、夜中に家を抜け出したが、駅のホームで一人がホームから落ち、列車に轢かれて重傷を負う。その列車にたまたま乗っていた前作でも登場した木場刑事が指示をし、轢かれた少女は救急車で病院に。もう一人から事情を聞こうにも、話はとんでもない身の上話から始まりらちが明かない。懇願されて病院に連れて行くが、そこにやって来た轢かれた少女の「姉」と名乗る女性は、木場刑事がブロマイドを持ち歩くほどの大ファンだったけれども、絶頂期に突然引退した映画女優だった。
成り行きから設備の整った病院への転院に付き添ったが、そこは「箱」としか思えない研究所だった。

そしてその後、関東近郊で連続バラバラ殺人事件が発生する。いずれも14・5歳と思われる女性の手足だけが発見される。秘密にされていたが、いずれも「箱」に入って捨てられていたという。事件に関わったのが主人公である小説家。現場を見に行って地図の読めない運転手によって「箱」の研究所にも行き、木場刑事と遭遇。実は刑事もバラバラ事件の応援に行かなければならないのを無視して研究所につめていた。治療だけでなく、誘拐予告まで発生していたのだ。しかし刑事達の目の前で患者は忽然と姿を消してしまった。

同じ頃、他人の記憶が見える探偵は、遺産相続に絡む行方不明者捜索依頼を受けていた。その人物はあの列車に轢かれた少女だった。

こうして一同が陰陽師・京極堂の元に集合、それぞれの知り得た内容を共有することに。今回初参加で、小説家が小遣い稼ぎで別名で寄稿している三流雑誌の編集者が加わった。彼は有能な人物で、京極堂の小難しい講釈をしっかりと理解して反応するだけでなく、警察しか知り得ない情報をどこからか入手することも行えた。
そして彼がもたらした別の情報は、不幸のもとになっている「魍魎」を箱に封じ込めるという怪しげな宗教団体が作っていた名簿に、バラバラ事件の被害者の家庭が載っているという。名簿の中の14・5歳の娘がいる家庭で行方不明になっている人物が、鑑定の結果被害者だという。そしてその名簿の中に、列車に轢かれた少女と一緒にいたもう一人の少女の家庭も載っている。彼女が危ない。

まったくつながらないように見えた事件が一つにつながろうとしていたが、陰陽師は別々の事件だと、何かを知っているかのように忠告をする。

そして事件は猟奇的な展開を見せ、冒頭の場面が重要な場面として浮かび上がってくる。


救いようのない物語である。
例によって説明の下りは読みづらいからほとんど飛ばした。
結論は途中から見えてはいたし、少女消失の場面でも、まさかとは思うがという感覚で答が見えていた。しかし後味も悪いし、夜中に読みたくはない本だ。などと言いながら夜中、寝不足になりながら一気に読み終えたのだが。

前にも行ったが主人公グループのキャラが多すぎる。おまけに主人公が饒舌で話の腰を折ってばかりで存在自体がうざくてしかたがない。新たに加わったキャラがまともなだけにこちらと入れ替わっていただきたいと思って仕方がない。
まあ今回の主人公は木場刑事だと言い切ってもいいんだが。

こちらも映画化されたようだが、TV放映の話を聞いていない。
でも、映像では見たくないような気もする。

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書評「豆の上で眠る」 [書評・映画評]


豆の上で眠る (新潮文庫)

豆の上で眠る (新潮文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫


主人公の少女が小学1年生の時、2歳年上の姉が行方不明になった。
2年後に発見された姉は、別人と思えて仕方がないまま大学生になった今、真の姉らしい人物を見かける。なぜかその人物は姉の友人だった。

タイトルと帯の短い紹介を見ただけで内容がわかってしまった。
13歳年上の義兄が就職した時に、僕と4歳上の兄に童話集を買ってくれた。僕にはグリム童話集を、兄にはアンデルセン童話集を。兄の持っていたアンデルセン童話集に、この話の元になった童話が載っていた。理解不能な物語だった故に、半世紀経った今でも鮮明に覚えていた。蛇足ながら本好きだった二人とも、小学校で開催された物語朗読会のクラス代表になり、僕は自分の童話集から、兄も何故か僕の童話集からの1編を読んだ。

閑話休題
姉が行方不明の2年間で主人公の人生は変わってしまった。
発見された姉は2年間の記憶を無くしていたと言うが、失踪前の記憶は完璧だった。なのに最初の違和感は、主人公の不注意で姉の顔に付けてしまって、一生残ると言われていた目の横の傷がなかったこと。そして現代になって、姉と一緒にいる友人らしい女性にその傷があったことが13年の時間の流れを越えて確信になった。

まあ第1章でこの場面が出てきた時点で、謎の背景は読めてしまった。僕自身が同じテーマでの小説http://www004.upp.so-net.ne.jp/tanzent/novel/byakuya.txtを書いていることもあったのだが。

そんなこともあって、どういう落ち着き方をするのか、それだけの興味で読み進めたのだが、きわめて普通の結末だったので、ちょっとがっかりもしている。
おまけに湊かなえらしくもなく伏線が一つも無い。
つっこみどころもいっぱいあったり。
亡くなった祖母は真実にたどりついていたらしいのだが、事情が事情なのだから、家族にだけは真実を告げておいても良かったのではないだろうか。はっきりと口に出して疑惑を告げる人たちもいたのだから。
そして、その2年間を含めて、失踪した姉が一度たりとも元の家に戻りたいとも思わなかったことが不思議で仕方がない。帰れない事情があったとも思われないのに。

主人公にとっては自分一人蚊帳の外に置かれたままになって、おまけに猫アレルギーが判明した姉のために愛猫と悲しい別れまでしたというのに。ラスト叫ばずにはいられない心境はよくわかる。こんなこと隠すことではなかったのに。

失踪中の2年間、姉の生活が結局はわからないまま。何を考えて過ごしていたのか。

最後に、猫を現在飼っている身としては、この本を読み返すのはつらいなと思ってしまう。

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書評「姑獲鳥の夏」 [書評・映画評]


姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/08/31
  • メディア: 新書


初版本を買っていたのに、読むのに23年もかかってしまった。
分厚い上に、冒頭数ページ難解な解説があったり、探偵側の登場人物が人数も多くて個性的で、判別しづらい等の状況で、結局積ん読状態になっていた。

再開のきっかけになったのは、幻想音楽好きのうちの娘がネット情報でこの本のことを知り、読んでないけど持ってるから読むか、と渡したら読破し、ちょうど公開されていた映画も見て、その後シリーズを当時発表されていたのを全巻読破。読んだ本はもういらないからと、この本を含めて全巻譲り受けたこと。数年後ケーブルTVで映画の放映があって録画して、数年後に見て、物語のイメージがつかめたので、なんとなく読んでみようかと思ったのだが、さらに数年後にようやく本を読み出すことに。
内容もうろ覚えで、映画の登場人物も堤真一と田中麗奈しか覚えていないので、ウイッキで調べ直して、映画のイメージを思い出しながら一気に読んだ。難解な解説は飛ばしながら。

正直読みづらい本だ。誰が主人公なのやら。
本来ワトソン役の記述者は、推理はイマイチなのだが、記述だけは正確というのが条件なのに、この記述者は記憶が欠落しているという前提がある。まあ早い段階でそのことが述べられているのでアンフェアではないのだが。見ているはずなのに見えていないという内容も、記述者の精神状況がこうなのだから仕方がないという言い訳の元、密室からの消失事件という内容ながら、実は見えていなかっただけというオチは本当のところどうなんだろう。

事件を解決する気などさらさらない探偵や、探偵する気などない陰陽師とか変人だらけ。まともなのは、映画で宮迫博之がやっていた刑事と、田中麗奈の陰陽師の妹くらいか。
映画ってのは普通本編をかなりはしょって縮めてしまう物なのだが、この小説に関しては映画の尺の方が正しいように思えてくる。まあ実際には映像にされると気持ち悪いだけだったのだが。

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書評「夜行観覧車」 [書評・映画評]


夜行観覧車 (双葉文庫)

夜行観覧車 (双葉文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/01/04
  • メディア: 文庫


TVドラマにもなった家族崩壊の物語。
この手の小説は苦手なので、TVドラマも見なかったし、文庫本になっている湊かなえのミステリーの本でも読むのが最後になった。

高級住宅街に3年前にやってきた遠藤家では母娘の言い争いが近所にももろわかりの激しさで、いつ事件が発生してもおかしくはない状況だったが、実際に殺人事件が起きたのは、向かいの家で家族5人が幸せに暮らしていて何の問題もないような高橋家であった。
父の連れ子である長男は関西の大学の医学部におり、事件当日長女は親友の家に泊まりに行っていた。なぜか次男は事件が起きたその時刻に、あたかもアリバイ作りかのようにコンビニにいた。
殺されたのは家族にとても優しく、子どもたちにも慕われていて進路を強制しない理解ある父親。殺したのは、夫の連れ子である長男に対しても自分の二人の子どもと分け隔てなく育て、その影響もあって母違いであるにも関わらず兄弟仲の良い3人の子の母親であった。
次男は事件後行方不明に。長女は行く当てもなく、頼りがいのある兄の所に向かおうとした。研究室にこもっていて事件を知らなかった長男は妹からのメールで、遅れて帰郷。偶然3兄妹がそろい、これからのことを語り合う。
一方、事件は自分の家で起こったかもしれないと思いつつ、向かいの家の遠藤家でも最悪の事態を迎えようとしていた。

読後に嫌な気分しか残らないミステリーを「イヤミス」と呼ぶそうだ。湊かなえはイヤミスの女王とか。でも、僕はあまりそういうことを彼女の小説で感じたことはない。いつでもパンドラの箱の最後の希望は残されている。この小説でも、みんなが冷たい視線を浴びせる中、事件の中にいる長女の親友の家族は彼女のことを助けて上げたいと、変わらずに手をさしのべる。
事件をかき混ぜようとする野次馬おばさんも最終的には味方になってくれる。

不思議なのは遠藤家の3人。崩壊しきっているはずなのに、なぜか家族に会話が成立している。最終段階まで到達したにもかかわらず、3人そろってケーキを食べながら会話を行うことにすごく違和感があって仕方がない。あたかも殺し合うことがゲームかなんかのように。これがストレス発散のはけ口だとしても。

高橋家の仲の良い5人家族。長男が夫の連れ子であるという設定はどういう意味があるんだろうかと、ずっと思わせながら、結果的にはそのことが事件の中心だというのは、物語の設定としても伏線とするにはあまりにも不味いんじゃないかと。
そして、いくら家族再生の手段として兄妹が話し合い納得した結果としてもあの解決策は納得しがたいような。TVドラマの最終回のネタバレを読んでも脚本家は同じ事を感じたようで、あの解決策を言い争ってる場面があったとか。

絶対的な味方と兄妹の固い絆を持っている高橋家は良しとして、誰も味方がいない遠藤家はこの先どうやって家族再生を行っていくんだろうか。そう言う部分をイヤミスと言うんだろうかな。

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映画「無限の住人」 [書評・映画評]

無限の住人.jpg
いきなりの白黒画面での派手な立ち回りの時代劇。
半世紀も前の東映時代劇かと思った。今の人は知らないだろうが、昔の時代劇ってこんなんだったなぁ。

キムタクって、50年遅く生まれたのじゃないだろうか。もっと早く生まれていたなら、時代劇役者で人気出て、役者なのに歌も歌ったりして。そんな往年の銀幕スターになっていたのかも。
依頼主が勝手に消えてしまってそれを追いかける場面なんか、堀部安兵衛が高田馬場に駆けつけるかのような雰囲気。明らかに上映する時代が違っている。昔の時代劇なんて、その他大勢の切られるだけの役者が、同じ人物が何回も別人として登場して切られては死んで、また登場しての繰り返し。その意味では現実のそういうシーンの体験者であった福本清三さんが、単独で役名入りで敵役で堂々と切られて
死んでいくというのは感無量なのかも。

原作コミックは知らないし、おそらくは映画化に当たって相当に改変しただろうから、読む気もない。逆に言えばコミックの愛読者だった人たちにとっては不満も多いだろうと思われる。これは仕方がない。キムタクのせいではない。

ラスボスの福士蒼汰が格好良い。でも、最後まで結局はワルだったのが原作通りとは言え、もったいない。格好良いといえば戸田恵梨香。主人公を極端まで追い詰め
最後は愛ゆえに身を献げてしまう。TVのエンジンを見ていた者からすれば、よくもまあ、キムタクと対等に堂々と立ち向かえる位置まで昇ったなとこれも感無量。

現実にはありえないことばかりなのだが、そこはコミック原作だから大目に見ないといけない。
ただし、やたら敵が多すぎる。一体何人倒せばいいんだとそれこそ無限の話になって主人公でなくとも疲れてしまう。で、気がつけば全員が倒れているって、何なんだろうね。

何なんだろうと言えば、適役の一味が一堂に集められて皆殺しにされるのなんか、陰謀丸わかりなのに不用心すぎる。結局はラスボス一人が賢かっただけというお粗末さ。いやいや、公儀を丸々信用しきっていたこと自体オマヌケとしか言えないのだけれど。

杉崎花ちゃんと戸田恵梨香が向かい合っている場面を見て、十数年後にはこちらの位置に花ちゃんが来るのかなとか思ったりして。

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映画「3月のライオン後編」 [書評・映画評]

3月のライオン2.jpg
「3月はライオンのようにやってくる」というイギリスの諺から
付けられたこの物語だが、この諺には後半があり、「そして
子羊のように去って行く」というのが後編の副題となっている。

前編が期待はずれだったので、まあラストをどう持っていくのか
という関心だけで見たのだが、原作がまだ描いていない、読者が
まだ知らない部分が思ったよりもよかった。で、腑に落ちたのだが、
前編荒削りを後編で収束させるという手法を監督が採ったんだなと。

原作にある部分での描写に関しては、付け加えた部分が蛇足で
あったり、舌足らずであったりと、不満点も多いのだが。
たとえば川本家が被る受難などはあっけなさすぎたり、主人公が
からまないまま解決して、それでいいのかと思ったり。
もっとも、原作でもあるのだが、主人公の独りよがりと空回りが
本当には直接の解決にはつながってはおらず、逆に主人公が
そのことを通して成長していくというのが短くても伝わってくる。
ラストの持って行き方、主人公が助けようとして、実は助けられて
いたということに気づくという主題の捉え方はいいと思う。

まあ本当はもっと描いて欲しかった部分は多いのだが。
たとえば修学旅行の場面とか、台風での出来事とか。
感想戦で名人と対話が成立していたとか。尺の問題なんだろうが。

作者から結末を聞き出して作ったということで、ちょっと不安では
あったのだが、こういう終わり方、この後どうなるのだろうかという
疑問を残して終えたのはよかったと思う。

原作を知っている人なら、前編を見ないで、後編だけ見た方が
いいかもしれないと思ったり。
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書評「リバース」 [書評・映画評]


リバース (講談社文庫)

リバース (講談社文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫


TVドラマ開始前に読んでおこうと思った。

湊かなえという作家は不思議な作家である。その作品の多くが依頼を受けて書かれる。ある時はラジオドラマの脚本として、ある時はTV局開局何周年記念ドラマとしてその局の名物番組を作品内に織り込んでとか。
そして、この作品は、出版社からラスト1行を指定されたとか。曰く、ラスト1行での大どんでん返し。ネタバレになるので、それ以上の詳しいことは書けないが。

今回はこの作者にしては珍しく男性が主人公。
しかし読み始めて実に気持ち悪い。全体的に気持ち悪い部分が2カ所あったのだが、読み終えてみると、実はその2カ所がこの作品の重要ポイントだった。だから、最初に感じた一つ目の気持ち悪い部分から、読みながら犯人がわかってしまった。ついでながらラスト1行のどんでん返しも、最後まで解消されなかったもう一つの気持ち悪い部分が原因だったということで、最後の一行で解消されることに。

第1章で現在の状況が簡単に語られ、何やら曰くありげな出だし。実に気持ち悪い。そして第2章で3年前に起きた事件のことが語られていく。
はっきり言って、主人公が付き合っている女性に事件のことを語るのがこの章なんだけど、こんなに会話の一つ一つまで語るはずがないと思われる。この部分、小説的には逆にした方が自然なんだけどと思ってしまった。
第3章以降は素人探偵が事件を調べていく。途中ミスリードも入れているのだが、ミステリー読み慣れている読者はまず引っかからない。

主人公がもう一つ感情移入しにくい性格をしているのだが、それもまた計算の内だとわかっていく。真相に近づいていく過程でそれがわかっていく。TVドラマでは主人公は藤原竜也なんだが、彼でも悪くはないけれど、読みながら佐藤健が浮かんでしまった。
TVの宣伝で共演がデスノート以来の戸田恵梨香とあって、読みながら、それを書いちゃえばネタバレになってるじゃないかと、突っ込んでしまう。
事件で亡くなる人物を小池徹平がやるようだが、本を読んでいると全然合わないように感じてしまうのだが、まあTVドラマはいろいろ設定を変えるからいいのだろうか。何しろ原作では3年前の事件のはずなのに、TVドラマでは10年前の事件になってるし。ちょっと10年は長すぎるんじゃないかと。

しかしさすがは湊かなえだなと。最初は気持ち悪さが勝っていたが、どんどん引き込まれるし、読み終えると、その気持ち悪さも伏線になっていたことがわかって、恐れ入りましたとなる。

ついでながら公立学校では備品消耗品の購入は手続きもあって、業者に注文してきちんとした書類が必要なので、気軽に町の文具店や百均屋は使えないことが多いので、そこんところは別に不自然でも癒着でもないんだけど。

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